


初代観音開きのクラウンをモチーフにした非常に珍しいトヨタの限定車、オリジンです。左後部の損傷でお預かりしました。
ならし板金での修理を希望されて遠方からお越し下さいました。相手のいる事故で保険を使用しての修理です。


ドアとリヤフェンダーが中に押し込まれています。


ホイールにも損傷があります。ホイールは生産中止になっているモデルで大きなダメージが無いので外注にて点検、修理を行います。リムのガリ傷は溶接盛り、研磨してもらいますので当店では行えません。

付属品を分解しながら修理の段取りをイメージしていきます。

リヤシートやドアトリム等の保管時に汚れやすい部品は梱包しながら取り外していきます。


損傷したドアは新品の部品がメーカーにありましたので交換になります。



新品のドアを車体に取り付けてリヤフェンダーの板金を行います。

一部ハンダを使いましたが、裏側を切開等する事無くパテ無しで板金出来ました。リヤフェンダー交換に比べても溶接が無いので車へのダメージは少なく済みました。



リヤドアを取り外しマスキング、脱脂清掃を行います。

鋼板素地には防錆、密着に優れたエポキシプライマーを塗布します。一般的には鋼板に直接サフェーサーやパテを塗布しますが塗膜は酸素や水蒸気を透過していて、いずれは金属の腐食につながりますので酸素(水蒸気)透過性が低く(ゼロではありません)シール性、バリヤー効果の高いエポキシ樹脂系プライマーを塗布しています。シール性が高いので上塗りの溶剤からのフェザーエッジの保護にもなり良い事づくめですが手間がかかるのが難点です。保険会社さんに説明しても「それは一般的な修理ではなく趣味の様なものだから」とプライマーの費用を認めてくれないことも多いですが、特に外資系塗料のマニュアルでは推奨している工程です・・・。


乾燥後ポリウレタン樹脂系サフェーサーを塗布します。



赤外線乾燥を行います。

再度ドアを取り付けてサフェーサー箇所を研磨しました。

調色を行います。カラー番号202のソリッド黒ですがカラークリヤーになっている場合が多く、今回の場合はカラークリヤーの度合いが強い為に深さを合わせるのが困難で、強い光源で見た時のスカシ方向は電着色が透けています。ブロック塗装はほぼ不可能でしたのでフロントドアにもボカシ塗装を行います。

フロントドアのモールなど付属品を脱着します。

ホイールが修理から戻ってくるまでの間リヤドアを進めていきます。新品のパネルは電着プライマーが塗られた状態で届いてきますので全体を研磨します。

裏面にシーリングを行います。

脱脂、清掃を行い研磨したときにプレスラインの箇所など鋼板の露出した箇所は先ほどのエポキシプライマーを塗布します。
ちなみにエポキシプライマーどころかサフェーサーも無しでこのまま色を塗ってしまうのも一般的で自動車板金塗装業界向けの書籍でも新品パネルを研磨して直接上塗りOKと書かれていますが国内、外資全ての塗料メーカーでそれが出来る塗料は無い筈です。



表、裏、全体にウレタンサフェーサーを塗布します。


サフェーサーの指触乾燥後ウェットオンで裏面を塗装します。

赤外線乾燥を行いサフェーサーを乾燥させます。

サフェーサーを研磨して脱脂清掃を行い塗装します。


赤外線乾燥を行います。

普通はこれで良いのですがオリジンの塗装はセンチュリーと同じで耐擦り傷性クリヤーを使用した鏡面仕上げになっていますので更に手間を掛けた工程になります。
塗装を赤外線乾燥後、一晩経過させ全体の塗り肌を研磨して落とします。

脱脂清掃、マスキングを行います。

トヨタ、レクサス対応の対擦り傷性ダイヤモンドクリヤーを塗装します。



ドアは乾燥させてホイールが修理から戻りましたので車体を進めていきます。

ガラスモール際の塗りこみが確実に行えるようにリヤガラスを取り外します。


塗装範囲全体を機械研磨、水研ぎを行い粉塵や汚れを洗浄します。



清掃後マスキングを行います。




フューエルリッドとピラーに付くカバーも塗装します。

調色したカラーベースを前後にボカシて全体をクリヤーコートします。クリヤーは先ほどのダイヤモンドクリヤーを使用しました。






赤外線乾燥を行います。

ドアを車体に取り付けます。

磨き付属品の組み立てを行います。分解の時に微妙に変形したモールなどは新品に交換しました。




ガラスモールも交換になりました。



ここからは事故とは関係の無い、オーナー様の自費でのボンネットの修理になります。
良い写真が無かったですがボンネット全体の塗膜の劣化と一部塗膜の筋状のヘコミの修理になります。

車体からボンネットを取り外しウォッシャーノズルやエンブレムを取り外します。


全ての塗膜を剥離します。


脱脂清掃を行い、先ほどのエポキシプライマーを塗布します。

乾燥後ウレタンサフェーサーを塗布します。

赤外線乾燥を行い、研磨、塗装を行います。



赤外線乾燥を行い全体の塗り肌を研磨します。


脱脂清掃を行いダイヤモンドクリヤーを塗布しました。


赤外線乾燥後磨きました。車体の方も同じで、しっかり乾燥させた状態の補修用耐擦りクリヤーの磨きは本当に大変ですが更に塗り肌の緩い鏡面仕上げでかなり時間が掛かりました。

車体に取り付けエンブレムも劣化していましたので新品のエンブレムを取り付けました。


洗車、清掃を行い完成です。







オーナー様から「お任せしてよかったです」と言っていただきました。
こちらこそ貴重なお車を任せていただきまして誠にありがとうございました。

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